『人体600万年史』から学ぶ
読書第2部 農業と産業革命
第7章 進歩とミスマッチとディスエボリューション
旧石器時代の身体のままで旧石器時代後の世界に生きているとー良きにつけ悪しきにつけーどうなるか
ミスマッチ
たとえば自然選択は過去数百年のあいだに、果実、塊茎、野生の鳥獣、種子、木の実など、繊維は豊富だが糖分は少ないさまざまな食物を摂取するように人間の身体を適応させた。そのために、現代のあなたが糖分ばかりで繊維の少ない食物を絶えず摂りつづけていると、いつ2型糖尿病や心臓病などの病気が発症しても不思議ではないのである。
ディスエボリューション
虫歯は、発祥の仕組みが壊血病と同じくらいよくわかっている進化的ミスマッチだが、それが今日でもいまだに世の中にはびこっているのは、私たちが虫歯の根本原因を有効に阻止していないからだ。その代わりに、文化的進化は虫歯ができたら治療するという手段を考え出した。(中略)だが、もし私たちが本当に虫歯を予防したいのなら、私たちは糖と澱粉の摂取を劇的に減らさなくてはならない。しかしながら農業が始まって以来、世界の人々の大半は、摂取カロリーの大部分を穀類に頼ってきた。虫歯を本当に予防できるような食生活を送るなど、ほとんどの人にとってはいまさら不可能に近いだろう。要するに、虫歯は私たちが手軽にカロリーを得るための代償のようなものなのだ。
第3部 現在、そして未来
第13章 本当の適者生存
最後にー後ろを向きながら前へ進もう
人間という種の豊かで複雑な進化の歴史から、最も学ぶでき有益な教訓があるとするなら、それは、文化によって私たちは自らの生物学的仕組みを超えられないということである。(中略)好むと好まざるとにかかわらず、私たちはやや太り気味の、柔毛のない、二足歩行の霊長類であり、糖と塩と脂肪と澱粉をひどく欲しがるが、食物繊維の多い果実や野菜、木の実、種子、塊茎、赤身肉など、雑多な食物を食べるようにいまでも適応している。ゆっくり休んでくつろぐのは大好きだが、いまでもその身体はかつてのとおり、一日に何キロも歩いたり、頻繁に走ったり、地面を掘ったり木に登ったり、ものを持ち運んだりするように進化した、持久力の高いアスリートの身体である。そしてたくさんの快適なものが大好きだが、毎日を室内で椅子に座って過ごしたり、サポート力の高い靴を履いたり、何時間も続けて本やスクリーンを凝視することにはあまりよく適応していない。結果として何十億もの人々が、かつてはほとんど、あるいはまったく見られなかった裕福病や新しさの病、廃用性の病に苦しめられている。そこでそれらの病気の症状に対処するのだが、それはそのほうが原因に対処するよりも簡単で、儲かって、早急にできるからであり、(中略)そして、そのような対症療法をとることで、文化と生物学とのあいだの有害なフィードバックループ(ディスエボリューション)がいつまでも解消されないままになる。